PU



硬度30に満たない生き物のように柔らかい超軟質樹脂の塊り
木片のしこりが埋め込まれ 不均一に硬くなる
体内に貫通させられたケーブルにより両端から締めつけられると
硬くて柔らかい身体(からだ)が持ち上がる
身体(からだ)は2週間の会期をかけてゆっくりと沈み込む ゆっくりと引きちぎれる
会期の最後に崩壊に至る
その一連の現象を「 PU 」と呼び 計算した

水と同等の比重1.00を持ち、156%の引張伸びを許容する超軟質の透明ポリウレタン樹脂の塊り。2.0m X 0.3m X 0.12m、72L。
この33%、23.76Lを置き換える骨材として、軽く一定以上の硬度の不純物として木片を混ぜ、かつ長手方向に貫通させたポストテンションケーブルにより内部応力を与えて変形を引き起こす。骨材をより多く混ぜれば樹脂塊は硬さを増し、比重は軽くなる。骨材の分布パターンの粗密により、局所的に硬く変形しづらくなった樹脂塊は、体内に不均一な機械特性の分布を獲得する。

ポストテンションによる引張りを追随し、樹脂塊は絶えず変形を繰り返す。引張り力の蓄積を記憶し、残存し続けるひずみにより、樹脂塊は二度と同じ形状に戻ることはない。ものがそこにあり、あり続け、同時にそのものでなくなっていくこと。
その現象全てをPhysics Engineによる解析と物理実験を用い計算し、デザインしたいと考えた。
自由律俳句の俳人、尾崎放哉の句に次のようなものがある。

   月夜の葦が折れとる (「層雲」大正15年4月号)

尾崎が詠っているものは、月夜でもなく、葦でもなく、それが折れていたことでもなく、その三者と尾崎という人物がそこに存在したごくはかない関係性が、尾崎を介して知覚されたという稀有な現象の全体性そのものでしかないだろう。
デザインにおけるコンピュテーションにおいて、そうした豊かさをこそ問題にしたい。そしてそれは可能になりつつある。






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‘PU’ 東京藝術大学陳列館「マテリアライジング展」、東京、June 08 ‐ June 23, 2013 © kwwek// 木内俊克 + 砂山太一
協賛:株式会社ポリシス