プロジェクトの敷地は新潟県、旧能生町(現糸魚川市)という日本でも有数の豪雪地に位置する。人口は1万人ほど、自然に恵まれた町で、冬の積雪は2mにものぼる。日本海をのぞむ海岸から能生川にそって7kmほど山側にあがったところに、築41年になる木造の旧水産高校がある。2000年から2003年にかけ、共同で行ったWorkshop Made-In-NOにより、その木造の旧校舎に二つのゲストハウス、NOAN West とNOAN Eastを増築した。
技術も経験も予算もないところから出発し、試行錯誤を繰り返した。ゲストハウスの材料を探していく中で、現地で解体される民家の廃材や、立ち枯れした間伐材に出会い、そして、現地では廃棄されてしまう雪の重みで曲がったまま育った竹に辿り着いた。
この円弧状に曲がった竹を、そのまま屋根構造として使うことを考えた。自然が生み出した竹の曲がりは、雪かきの労力を軽減してくれる。
妻側に取り付けた半割の竹の壁を開けば、夏にはすがすがしい風が吹きぬける。風が能生川のせせらぐ音を運ぶ。冬には炉を囲み、暗闇にゆらぐ火をいつまでも見ていられる。
古びた廃校の屋根の上の増築。室内の壁として取り込んだ、年を経て美しく時間を蓄積した木造の外壁を背に、豊かな森を見渡すことのできる場所を獲得した。
NOAN West & East / 新潟, 日本, 2000-2003
© Workshop Made-In-NO/木内俊克、大久保康路、喜多裕、村澤明生
延床面積: West/17㎡, East/42㎡ 発注主: 村澤明生 用途: ゲストハウス
SD Review 2003 入選