本作品は、2005年に《聞いた話》展でR&Sie(n)が提示した仮想都市での身体感覚を擬似体験するためのパヴィリオンとしてデザインされた。その為に、来場者にある種の催眠をかける映像作品が室内に設置されている。
19世紀前半、硬直した体制に支配された現実から逃れ、自由な場所を手に入れる手段として、ヨーロッパの多くの知識人により催眠術が試みられた。19世紀における社会の硬直は、アントニオ・ネグリの「帝国」を参照するまでもなく、そのまま現在の社会にも重ね合わせることができる。ヒプノティック・チェンバーは、私たちの身体の奥深くで眠り、忘れ去られてしまった自由さの意味を再び呼び起こす装置だ。
技術的には、本作品では5軸のCNCマシンの建築的スケールへの全面的な応用を試みた。CNCとは3次元CAD内のデータを直接ドリルのついた研削機に送り込むことで、複雑な形状の加工を2次元の図面を媒介せずに、高精度で迅速に行う技術である。今回は文字通り全てのピースをこの5軸のCNCマシンにより削り出した。分割サイズは輸送効率を最大化するように決められた。
構造的には、船舶で一般的なFRPをシームレスに張り込んだモノコック構造とした。
Hypnotic Chamber / 十和田市現代美術館, 青森, 2010
© R&Sie(n) [ François Roche, Stephanie Lavaux, Toshikatsu Kiuchi ] CNC production : Tecmolde (Spain), Japanese translation & dubbing of Hypnosis Session : Daisuke Araya, Noriko Hanyu
投影面積: 45㎡ 発注主: 十和田市 用途: 恒久設置の建築インスタレーション ( 最高部位高さ4m、平面11m×8m ) および室内に設置されたモニターの映像作品