大槌町中央公民館吉里吉里分館



東日本大震災により被災された岩手県大槌町の復興計画において、公民館の設計を行った。地域復興協議会にて公民館の概要について地区住民との議論が行われ、公民館に関わる基本的な考え方は与件として整理されていた基本設計段階より参画した。「1) 子供が気軽に滞在できて多世代で交流できる、2) 震災について語り伝える、3) 多数の団体で柔軟に活用できる、4) いつでもだれでも自由に使えるフリースペースが設置される」の4項目が重要な主軸であった。

そこで明示的な同軸に沿いながら、同時により深く地域に根差した施設のあり方を目指し、第一に地域の自然や地形とダイレクトに関わる基盤整備と連携した計画の積み上げ・調整を行うこと、第二にその積み上げ・調整の各段階においては、地域住民による価値判断と建物の設計をダイナミックに連動させることを徹底した。
さらに言えば、それら設計プロセスを実直に運用することで、施設の設計に伴って地域住民の価値観をかたちに定着していくことを目指した。

設計上の主要な特徴を以下に列挙する。
1. 公園との一体利用促進。段差解消のみならず、排水設備の共有による一体化、ホールの公園への正対、ホール⇔公園開口部の最大化を担保する架構形式
2. 質の高い居心地と、3分割可能な柔軟性のあるホール
3. ホールに自然光を導き、諸室をつなぐ、2階廊下を経由した通風兼明り取り窓
4. 動線の整合、開口部位置の整理による諸室連携
5. 共用部への小さな居場所の分散配置
6. 活動の自発性を育む、微細な設えの散りばめによる活動誘発の働きかけ

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大槌町中央公民館吉里吉里分館 /大槌, 岩手, 2018
基本設計: 東京建設コンサルタント 実施設計・監理: 北光コンサル 設計監理協力:喜多裕、木内俊克、田中雅之、友寄篤
構造: 福山弘構造デザイン/福山弘 設備(基本設計): KDプランニング/高橋將悟、鈴木裕介、手島洋介 設備(実施設計・監理): テーテンス事務所/真野智敬 照明・電気: EOS plus/遠藤和弘、杉山容子 積算: 原建築積算/原弘光

(※ 復興まちづくりの関係者については、国士舘大学・二井昭佳による「岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里地区における復興まちづくりについて」 http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00897/2015/11-0131.pdf に詳しい記載があり、同論文を参照いただきたい)

[主要用途] 公民館
[規模]敷地面積:539.77㎡ 建築面積:317.55㎡ 延床面積:419.88㎡ 2階
[寸法]最高高さ 7.524m [構造]木造, ベタ基礎